今まで当たり前だと思っていた世界が急激に変化しています。
皆さまもそうだと思いますが、日々目にするニュースは遠い異国の誰かの話ではなく、同じ星に生きる者として状況を見守り、痛みを感じ、祈り、今自分がすべきことは何かを考えさせられているものだと感じています。
海外に住む友人や家族も多いのですが、日々変わってゆく状況を聞く中で恐れに全てを引っ張られてしまうような感覚になってしまいそうになります。
いつも、皆心では繋がっているのだとそう感じて来ました。きっとそれを伝えたくて絵を描き、詩を綴り続けて来たのだとそう思います。
皆同じ場所から来て、同じ場所に帰る。その場所はこの世界でも皆それぞれの心の中にあり、そこは国境も鍵のかけられた扉もない懐かしい場所・・・。
今の世界に起きている事は、飛行機も止まり、国境は閉ざされ、人の行き来は止まり、もと居た場所に留まるように促されています。
経済的にも多大な損失、影響はきっとこれから本格的に出てくるのだと思います。
でも、同じ一つの事に世界中が今戦っており、その中であたたかいやり取りが日々行われているニュースも耳にします。
私の好きな絵本に 中国のファン・イーチュンという方の書かれた”しんせつなともだち”という絵本があります。
しんせつなともだち <福音館書店 こどものとも傑作集>
1965年に初めて出版された本なのですが、おはなしはとてもシンプルで、ある日雪の中で2つのかぶが落ちているのを見つけたこうさぎは、1つは食べて、残りの1つを ”ゆきがこんなにふって、とてもさむい。ろばさんは、きっとたべものがないでしょう。このかぶをもっていってあげましょう” と雪の中を歩いて友達のろばの住む家に持って行ってあげます。
ろばは不在でしたが、こうさぎはそのかぶを家の中にそっと置いて帰ります。 食べ物を探し、見つけて帰ってきたろばは、家の中でかぶを見つけて、(自分は取ってきた食べ物があるので)かぶをやぎの友達の家に同じように届けます。 これが様々な動物たちの間で同じように繰り返され、最終的にやさしい友達の手によって、こうさぎの所まで戻ってくるのです。
最後にこうさぎが目を覚ましてかぶを見つけると、”やあかぶがもどってきた”と驚きますが、少し考えてすぐにわかるのです。
”ともだちが、わざわざもってきてくれたんだな”
最近ふと、この絵本を想い出し、今日手にとって読んでいました。
誰かを思い遣り、行動してみること。それが連なってゆくと、誰かから始まった優しい想いはいつかはぐるっと一周してゆくということ。
このお話は愛そのものなのだと改めて感じました。
遠く離れた場所の誰かを想う時、物理的な距離を考えてしまうと何もできないかもしれないと思ってしまうかもしれません。
でも、身近な誰かに何かすること、目の前にいる人に思い遣りある行動をしてみること…それならこの瞬間にも出来ることなのだと思います。それが少しずつ誰かに渡されて行き、心は繋がってゆくのだとそう思います。
このお話の根底に流れているメッセージは”情けは人の為ならず”(他人に情けをかけることは、その人の為ばかりではなく、いずれは巡り巡って自分にも還ってくるもので自分の為でもある)なのだと感じます。
こうさぎの様に自分の知らない所で思い遣りの行動が続いて行って、思いがけずに帰ってくること。
私がこのお話で好きな部分の1つは最後の、”ともだちがわざわざもってきてくれたんだな”と言う所。 誰かの親切を感謝して受け止めることも大切だなと感じます。
今、世界中で起きていること、きっとこのお話のように誰かが誰かを思い遣り行動し始め、その連鎖が心の世界で起きているのだとそう感じます。
まだしばらく大変な時期は続くのかもしれません。でも何が大切なのか、今までの価値観を一旦解き放して自分の中で選択してゆくチャンスでもあるのだと、そう捉えています。
たくさんの祈りを込めて…